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2013年7月 9日 (火)

東電は海洋流出を頑として認めないが、不条理な説明に不信感倍増

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 福島第一原発の敷地内の地下水は山側から海側に流れているが、海に出ているかどうかは全体を見て判断したい−−−。東電はそんな説明を繰り返し、地下水の放射能濃度の上昇が発覚してから3週間以上になる現在も、汚染水の海洋流出を認めていない。

 地下水は山から海に向かって流れているが、海に出ているかどうかは不明という東電の説明は論理的に適切といえるのだろうか。東電の会見担当者である、原子力・立地本部長代理の尾野昌之氏は、福島第一原発の港湾内の海水の数値に大きな変化が見られないことなどから「正確に答えるなら、もう少し調査させていただきたいということ」だというが、正確に現状を評価するなら『海に出ている可能性があるが、海水のデータに大きな変化がない理由はまだわからない』ということではないだろうか。

 これまでの東電の説明は、海洋流出という結論を先延ばししているだけのように感じられる。事故直後にメルトダウンを2か月間も認めず、結果として事態の過小評価につながったことがデジャヴのように蘇る。

 東電は6月19日の朝8時過ぎ、報道関係者に一斉メールを送信し、福島第一原発のタービン建屋海側(東側)に掘削した地下水観測用の井戸(No.1観測孔)から、高い値のストロンチウムとトリチウムが検出されたことを知らせ、同日午前10時から臨時会見を実施した。数値は、2012年12月8日に採取した時にトリチウムが1リットル当たり2万9000ベクレルだったものが、5月24日には50万ベクレルに、全ベータ核種が150ベクレルだったものが1900ベクレルに上昇していた。

 検出された場所が海から30mもない場所だったため、記者からは海に流出しているのではないかという質問が相次いだ。これに対して尾野氏は、港湾内などのモニタリング数値に目立った変化がないことから「海側データを見る限り影響はないと考えている」と説明。「流出を否定するのか?」という問いに対しても「海側データを見る限り影響はないと考えている」と同じ回答を繰り返した。

 地下水の汚染が確認されたNo.1観測孔は、2号機タービン建屋から海側に伸びた電線管(トレンチ)の先の、事故直後に高濃度の汚染水が流出した部分から30m弱、北にいった所にある。東電は、港湾内の海水中に含まれる放射性物質の濃度が予測より下がらなくなったため、昨年12月に観測孔を掘削し、地下水の汚染を調査した。汚染水が地下水まで浸透し、海に流出している可能性を考えたからだった。

 当時の調査では、高い値は確認されず、東電は海洋流出を否定した。しかし海の濃度はその後も下がらなかったため、東電は4月、外部専門家を集めた委員会を設置し、状況の検討を依頼した。この検討会で観測孔の再調査の話が持ち上がり、東電が5月に調査したところ、6月初旬に数値が上昇していることがわかったのだった。

 ところが東電は、この結果をすぐに発表しなかった。公表したのは6月19日で、試料の採取から3週間以上も経過していた。それでも尾野氏は、公表まで時間がかかったことを会見で問われると、「あくまで検討会のためのデータなので」問題はなかったと回答した。検討会向けのデータと公表するデータを区別しているという説明は、今でも東電が、なんらかの基準で、公にする情報の取捨選択をしていることを意味する。都合の悪い情報が公表されていないのではという懸念が浮上する。

 その後、地下水観測用の井戸からはストロンチウム、トリチウムが継続して、高い値で検出された。6月29日には最初の井戸よりも海に近い場所(護岸から約6m)に新たに掘った観測用井戸から高濃度のトリチウム、ストロンチウムが検出されたことが、HPで公表された。「No.1−1」観測孔と名付けられたこの井戸からは、No.1観測孔と同じ1リットルあたり43万ベクレルのトリチウムと、No.1の2倍以上になる3000ベクレルの全ベータ核種が検出された。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2013/images/2tb-east_130629_02-j.pdf

 それでも尾野氏は7月1日の会見で「長期的に見ながら判断する必要がある」「総合的に判断する」などと繰り返し、流出を認めなかった。7月8日の会見では、地下水が山側(西側)から海側(東側)に向かって流れてることは認めたものの、放射性物質を含んで海に流出していることは認めず、「海側で測定されているモニタリングの結果や、ボーリング(観測孔の追加)も追加で実施しようとしているので、状況を見極めたうえで判断していきたい」と、結論を出すのを先に延ばした。

 地下水の汚染は、事故直後に2号機タービン建屋から海に伸びている電線管(トレンチ)の損傷により、護岸から超高濃度(表面線量が1000mSv/h超)の汚染水が海に流出した時から疑われていた。東電はその後、汚染拡大の防止策として、海側に伸びているトレンチのほとんどをコンクリートで埋めた。

 しかし海への流出は、電線管の中ではなく、電線管の下に敷かれていた砕石層を通ってきた可能性が高かった。砕石層の下はむき出しの土壌だ。トレンチの閉塞作業はしたものの、建屋から伸びる部分すべてに手を着けたわけではない。

 また、トレンチの汚染水はタービン建屋から漏洩したものだと考えられたため、根本的には建屋からの漏洩か所を特定して止水しない限り、汚染水が供給され続けることになる。しかし漏洩か所の特定は、現状では不可能だ。だとすると、建屋からトレンチへの流出は都築、汚染水は地下に浸透していったと考えるのが自然なことにも思える。地下水で希釈されるため濃度は不明ながら、汚染水が海に出ているとすれば港湾内の放射性物質の濃度が下がらない理由にもなるのではないだろうか。

 けれども東電は、この可能性を否定し続けている。6月24日には海側でトリチウム濃度が上昇傾向にあることも発表されたが、尾野氏は「測定の再確認をするとともに、再度サンプリングして状況の確認をする」と述べ、評価を避けた。

 こうした東電の認識、説明に対して、記者からは疑問の声が何度も上がっている。例えば7月1日には次のようなやりとりがあった。

−−−(観測孔1−1でトリチウムが)43万ベクレルが出たという事に対する所見がなかった。データのみ発表したが、なにもないということか。

東電「No.1観測孔に対して、より海に近い1−1で出ているので、そのことを踏まえて、ガラスで地盤改良をしている。これをなおいっそう進める。ただ、現状、なにを意味するか、どう考えるかを申し上げるには、他のボーリングの結果や海側のさらなるデータを見極める必要がある。具体的に所見をいうところまで整理されていないが、まずはお知らせさせていただいたということ」

−−−(観測孔の状況を)総合的に判断するということだが、なにをもって流出と判断するのか。どういう状況になったらそう判断するのか。

東電「よくみていかないといけないと思っているが、海側の全体的な状況と、No.1に近い領域の状況など、トレンド的に動きをみて特異な状況がないかどうかなどを見極める必要あると思っている。いずれにしても現時点では、大きな動き見えてないので、しかもまだデータ点も少ないのでよく見ていきたいというのが今の状況だ」

 なにをもって判断するのかの根拠を示さず、データを集めると言い続ける東電の説明は、判断の先送りとしか思えないものだ。

 状況がわからないとしつつも東電は、海洋流出防止策として地盤の改良工事に着手した。このことについて東電は、「調査はしているが、結果にかかわらず地盤改良工事等できることは最速で行うということ。そうした活動も、並行してというより先行して進めているところ」と説明し、先手を打った防止策であることを強調している。

 しかし東電が、海洋流出を前提に作業しているのか、出ているかどうかわからないという認識で作業しているのかが判然としないため、工事のスピードには不安を覚える。2年前、海洋流出やメルトダウンについて「確認する」と言っている間に汚染水の問題が拡大したことを思うと、懸念が払拭できない。

 一方で大手メディアの中には、東電が流出を認めないために報道しにくい、という声もある。まさにメルトダウン報道の時と同じ隘路に入り込んでいるように見える。東電の説明を鵜呑みにしている記者はほとんどいないようだが、「否定できない」という状況で扱いを大きくできるかどうかは、微妙なところかもしれない。とはいえ海洋汚染につながる事態を取り上げることに二の足を踏む社が出てくるのは、東電にとっては願ってもないことであろう。

 今の東電にとって、公式に認めないままにしばらくやりすごすのは大きな意味を持つ。東電は春から、福島県の漁業関係者を中心に、地下水バイパスを実行に移すための説明会を実施している。地下水バイパスは、建屋地下に流れ込んでいる地下水の量を抑制し、汚染水の発生量を減らそうという試みだ。

 建屋には1日に約400トンの地下水が流れ込んでいると見られていて、これが建屋内の高濃度汚染水と混じり合って汚染水の全体量を増やし続けている。そのため建屋に流れ込む前に地下水をくみ上げ、汚染を回避して海に放出し、流入量を減らそうというのが、地下水バイパスの計画だ。

 本来は4月に開始する予定だったが、地下貯水槽からの汚染水漏洩事故で漁業関係者の了解を得ることができなくなり、説明会を継続することになった。そこに加えて海洋流出が継続、拡大しているとなると、同意を得るのはさらに困難になるだろう。東電が流出を認めない理由は、こんなところにもあるのかもしれない。

 しかし、いくら状況を誤魔化しても事実はすぐに露呈する。その時の反発は、事前に説明した場合の比ではない。地元と東電の信頼関係は、これまでにないほど崩れるかもしれない。そうなれば、今後の事故収束作業にも大きな影響を及ぼす。

 東電は小手先の説明で誤魔化さず、きちんと論理的に説明をすべきだろう。正直に、誠実に状況を説明することが、漁業関係者や地元の理解をえる早道ではないだろうか。3月の停電事故の発表遅れ、4月の地下貯水槽の漏洩発表遅れに続く今回の地下水の濃度上昇の発表遅れは、不信感を増幅させている。それでも方向修正は早いほうがいい。賠償について東電関係者がいつも口にする「親身親切」という言葉が口先だけのものかどうか、衆目が集まっている。

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