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2013年6月10日 (月)

県民健康管理調査で甲状腺ガン12人、疑い15人ー「放射線の影響はない」に科学的根拠なし

20130605small06

 6月5日午前10時15分、福島県は予定より15分遅れで、県民健康管理調査の検討委員会(星北斗座長)を開催した。議題は、回収率が約23%からまったく向上しない基本調査の問題、健康診査の実施状況などいくつかあったが、焦点は、甲状腺検査の結果に集約された。

 検討委で福島県立医科大学の鈴木眞一教授が発表した数字は、前回よりさらに増えて、甲状腺の腫瘍が悪性または悪性の疑いの合計で28人で、そのうち13人に手術を実施。手術後の病理検査で良性が1人だったことがわかったため、最終的に悪性腫瘍と確定したのは12人で、すべて乳頭癌という種類だった。前回の検討委では、悪性または悪性疑いは合計で10人、そのうち3人が手術を受けて甲状腺ガンと確定していた。

県民健康管理調査の甲状腺検査の結果概要

http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250605siryou2.pdf

(資料より抜粋)

 検討委の発表についてはすでに数多くの報道がある。甲状腺検査結果に対する反応は、さまざまだった。また朝日新聞のように、全国版と福島県版で主旨が違っているものもあった。

放射線の影響否定 甲状腺がん診断確定12人に(福島民報 2013年6月6日

http://www.minpo.jp/news/detail/201306068849

「甲状腺がん」8歳以下ゼロ 18歳以下対象・県民調査(福島民友 2013年6月6日http://www.minyu-net.com/news/news/0606/news9.html

甲状腺がんの子、12人に 福島県調査、被曝影響は否定(朝日新聞 2013年6月5日)

http://www.asahi.com/area/fukushima/articles/MTW1306050700007.html

子どもの甲状腺がん12人●検討委「長期観察を」(朝日新聞・福島県地域版 2013年6月6日)

http://www.asahi.com/area/fukushima/articles/MTW1306050700007.html

「福島の子ども、12人甲状腺がん」の謎(東洋経済オンライン 2013年6月9日)

http://toyokeizai.net/articles/-/14243?page=2

 これまで鈴木教授は、子どもの甲状腺ガンは100万人にひとりかふたり程度しか出ないと説明していた。2012年3月5日の長崎新聞電子版は、鈴木教授が、検査が本格化するなかで微少ガンなどを発見する可能性もあるため、被曝と関係なく発生率が少し上がることが予想される、と指摘したと報じている。

東日本大震災から1年 低線量被ばく 長崎大と福島・2/小児甲状腺がん(長崎新聞 2012年3月5日)

http://www.nagasaki-np.co.jp/news/k-peace/2012/03/05165027.shtml

 また鈴木教授らは、甲状腺検査を同大の倫理委員会に申請した際の資料「研究の背景及び目的」の中で、「放射線の影響がない場合でも、通常小児では触診で約0.1から1%前後、超音波検査で数%の甲状腺結節を認めることが予想されます」としたうえで、以下のように記述している。

−−−しかし、小児甲状腺がんが年間100万人あたり1、2名程度を極めて少なく、結節の大半は良性のものです。

 このように現時点での子どもたちの健康管理の基本として、甲状腺の状態をご理解いただくことが、安心につながるものと考えております。

 そこで、本研究では、小児健康調査の基礎情報収集を行うことを目的とします。

 つまり福島県立医大は、超音波検査による有所見率の向上を予想したうえで、小児甲状腺ガンの増加は予見していなかったと見ることができる。

県民健康管理調査の一環としての福島県居住小児に対する甲状腺検査(情報公開クリアリングハウスによる情報開示) http://clearinghouse.main.jp/web/fukushima_m015.pdf

 ところで今回の検討委で発表された数字を100万人あたりに換算すると、最大の見積もりとして悪性および悪性疑いを合計した場合、2011年度で269人、2012年度で91人だ。仮に今後、全員が悪性と確定した場合、県立医大が前提とした数値の45〜270倍にもなる(乳頭癌は細胞診でほぼ確定できるため、県立医大で「悪性」と判定した人数は確定数よりかなり多いと予想される。県立医大は、「悪性」と「悪性疑い」の内訳を公表していない)。

 もう少し内訳を細かく見てみると、2011年度と2012年度では割合が大きく異なることもわかる。2011年度は1次検査(エコー検査)の受検者数が4万302人で、手術でがんと確定したのは7人。100万人あたりにすると171人だ。2012年度は1次検査受検者数が17万5499人で、手術で確定したのは5人。100万人あたりにすると28人ということになる。

 遡れば、2月の県民健康管理調査で3人の甲状腺ガンが確定した際にはすでに、単純計算で100万人あたり1人か2人という数字を超えていた。これを疫学的な見地から分析した岡山大学大学院環境生命科学研究科の津田敏秀教授は、「多発といわざるをえない」と指摘していた。

甲状腺がん「被曝の影響、否定出来ず」〜疫学専門家インタビュー(Our PlanetTV)

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1549

 津田教授の指摘の詳細は上記記事を参照してほしいが、ごくごく簡潔に要旨をまとめると、①ガンは発生から発病まで時間がかかるものだが、その期間を考慮しても多発といえる。つまり検査機器の精度向上による発見という説明は理屈に合わない、②すでに手術をしているので手術不要の微小ガンと説明するのもおかしい、③こうしたことから、被曝の影響ではないと断定するのは材料はないし、もし被曝の影響でないのなら原因不明の多発ということになるため対策が必要、ということになる(他にも重要な指摘はあるけれども、いずれまた機会を作ります)。

 今回、検討委後の記者会見で鈴木教授に多発といえるのではないかと質問すると、「最新の超音波機器を用いて専門医が実施したうえでの発見率。比較する元データはないが、想定の範囲内の数なのかなということしかわからない」と回答したのに続けて、「成人の超音波検診では甲状腺ガンは見つかる」と述べた。

 さらに鈴木教授は、疫学的な考察をした上で多発を否定しているのかという質問に対し、「根拠になる数字はまだ、そういうのはないので、検診を(している)。今までないものと比較しろといわれてもできない。いちばん近いものとして、成人例の経験を申し上げた。年齢分布も、極めて成人に近い分布なので申し上げた」と説明した。

 小児甲状腺ガンと成人のガンを同一視するような説明は、誤解を生む余地があるといえるだろう。今回の年齢分布は前掲の図表にあるように、9歳=1人、11歳=3人、12歳2人、13歳=5人、15歳=4人、16歳=5人、17歳=6人、18歳=2人である。このため鈴木教授は年齢分布が成人に近いと述べているが、以下のグラフに示すように甲状腺ガンは20歳以下の発生数が極めて少ないことを考えると、年齢分布が成人に近いとはいえないのではないか。また比較できないのであれば、可能性も疑い、そうした考察もすべきではないだろうか。少なくとも統計学は、発生頻度の低いものの出現率を推測し、分析することができるはずだ。

年齢別甲状腺ガン発生数(100万人あたり/人口動態統計とガン登録数から作成)

Photo

 検討委の星座長は「軽々にまったく影響ないとか、影響あるとかはいうべきではない」と述べているものの、鈴木教授の説明に沿って「今回の調査はやっったことがないというのがひとつ。ガンに結びついてるのは比較的年齢が高い。9歳以上だったというのがあって、放射線の影響かどうかはにわかには判断できないにしても、明らかな影響があるとは考えてない。少なくとも私は考えてない」と総括した。

 しかし津田教授は講演会などで、まずは多発しているかどうかを確認することが重要で、多発であるなら原因を究明するなり予防策をとるなりすべきであるとも述べている。そのうえで、因果関係を究明しないと賠償請求が不利になること、因果関係の調査には人間の調査が必要で、人間の調査には行政の協力が不可欠であることを指摘する。現状を、ウワサ話で政策が変わる状況だと批判し、「ドキュメント、数値で決めましょう」とも主張している。

 少なくとも、現在の検討委員会がよりどころにしている鈴木教授の説明には、科学的根拠はないというほかない。いってみれば、医師の経験からくる「カン」というべきものではないだろうか。もちろん臨床の世界で「カン」は重要だと思うが、県民健康管理調査のような調査では「科学」をより重視すべきなのは間違いない。100万に1人か2人という前提が大きく崩れたにもかかわらず、それを科学的に理論立てて説明しないまま、放射線の影響を否定するだけでなく、多発かどうかの科学的、学術的検証をしない検討委員会の姿勢には、疑問を感じざるをえない。

 検討委員会後の記者会見は今回、「委員の方には予定がある」という理由で約30分ほどで打ち切られた。情報公開に対するこの姿勢とともに、科学的考察のない調査の進め方を改めない限り、福島で起きていることの実態は見えてこないのではないか。

 記者会見の最後に、検討委員でひとりだけ残った清水一雄・日本甲状腺学会理事長は今後について、統計学的な考察は「不十分。検討委員会に働きかけたい」と述べた。これが実行されるのかどうか、今後も注視が必要だ。とはいうものの、次回の検討会は3か月後。その間、甲状腺検査の考察に新たな進展があることを望みたい。

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