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2013年6月15日 (土)

復興庁・水野参事官のツイッター暴言問題を、トカゲのしっぽ切りで終わらせてはならない

Screenshot

 水野靖久参事官のツイッターが大きな話題になって2日が過ぎた。マスメディアの動きも早く、毎日の記事朝日日経読売産経が追いかけただけでなく、水野参事官のツイートをまとめ、集会等の映像をサイトにアップして記事を構成したOurPlanetTVのサイトにはアクセスが集中している。

 14日に開催された国会の震災復興特別委員会で根本大臣は、「事実関係を確認中。国家公務員としていささか不適切な発言。関係者に不快な思いさせたならお詫びしたい」と答弁。水野参事官の処分もありうると述べていた。

 しかし問題の本質は、関係者が不快な思いをしたという単純なものではないと思える。水野参事官も現場の責任者として関わっていた「原発事故子ども・被災者支援法」が、成立から1年間も店ざらしになり実施の目処が立っていない理由の一端がツイートから透けて見え、その背景に復興庁や政府の思惑さえ感じることのほうが、はるかに重要なことではないだろうか。

 水野靖久参事官のツイートは、全体としては個人の考えを述べただけといえるが、一部に極めて不適切な発言が含まれていたのは間違いない。最悪といえるのが、2013年3月7日に衆議院第一議員会館で開かれた「どうする? 放射線による健康被害への対応ー市民・専門家による提言」に関するツイートだろう。

 集会は、元国会事故調査委員会委員の崎山比早子氏、当時は東大大学院人文系研究科教授(現在は上智大学教授)の島薗進氏、小児科医の山田真氏らが出席し、講演の他、復興庁の水野参事官や環境省担当者らとの対話セッションにも参加していた。また会場からは、前双葉町長の井戸川克隆氏から「公務員は国民のために働くという大前提の元に職場が与えられると思っている。今の議論は、できないことをできないというだけの言葉のやりとりをしていただけと思う」という発言もあった。

 この時のやりとりに対して、水野氏は同日夜に「左翼のクソどもから、ひたすら罵声を浴びせられる集会に出席。不思議と反発は感じない。感じるのは相手の知性の欠如に対する哀れみのみ。」とツイートしたのである。

 当日は確かに会場に来ていた人達が声を上げる場面はあった。ただこれは、集会で岡山大学の津田敏秀教授がskypeを使って、2月に発表された甲状腺ガン確定が3人という数字をもとに「多発」であるという分析を説明したにもかかわらず、環境省は検査機器の福島県の認識と同様、検査機器の性能向上がガン発見の理由だと述べ、4年、5年経たないと判断は難しいと判断の先送りをしていたことに対する反応だった。環境省の説明は、福島県の県民健康管理調査の検討委員会で担当者らが説明する内容と寸分違わぬものだった。

 また昨年6月に衆参両院で全会一致で成立したにもかかわらず、その後は具体策が進まずに店ざらしになっている「原発事故子ども・被災者支援法」への行政の対応にも、ストレスが溜まる要因があった。同法では、政府は支援対象地域を指定し、具体的な支援内容を盛り込む「基本方針」を定めなければならないと記載されている。

 3月7日に会場に集まっていた人たちの多くは、子ども・被災者支援法成立後の1年間、条文に明記されている基本方針策定と対象地域の指定を要望し続けてきた人たちだった。しかし行政側は、具体的な行動をなにもしてこなかった。私自身は、当日の声はそうした時間経緯の中での怒りの声だったように感じていた。

 その後、水野参事官は3月19日には、国会議員に対して状況を説明する集会で同法を発議(子ども・被災者支援法は議員立法)した議員らから、基本方針の策定や住民を交えた意見聴取会の開催を求められると、「そもそも法律をちゃんと読んでいただきたい。政府はこれこれ、必要な措置を講じる。なにが必要かは政府が決める。ちゃんとそれは意見は聞く。パブコメもやる」と応酬したのだ。この発言に、参集していた谷岡郁子議員、福島瑞穂議員、川田龍平議員らは怒りを隠さなかった。

子ども被災者支援法「基本方針」がふりだしへ〜解釈めぐり激論(Our Planet TV)

 川田議員は集会の終盤で、水野参事官に対して「発議者に向かってそもそも法律を読めは失礼。パブコメでは十分ではないと、福島さんの質問に、私は国会の答弁の中で答えている」と批判した。その夜の水野参事官のツイートが次のようなものだった。

「国会議員相手に失礼なことを言い過ぎたとちょっと反省。まぁいいか…」

 水野参事官のアカウントからは、特定の国会議員、それも子ども・被災者支援法に関係する議員の動向に注意を払っていたことがわかる。例えば以下のような国会議員らのツイートを、「お気に入り」に登録していた。
https://docs.google.com/file/d/0B5jyJeiqBSmLbkpIU29YYzZ5U1U/edit?usp=sharing

20130614_214135_2

福島みずほ議員

子ども・被災者支援法は保養についても規定。復興庁、農水省、文部科学省などと子どもの保養に取り組む自治体、NGOを支援するために知恵を絞っている最中。今年の予算で、被災した子どもたちの保養に使えるものはないか。夏休みまでに前進があるようNGOの人たちと取り組んでいます。(2013年5月20日)

谷岡郁子議員

本日発売の週刊金曜日、インタビュー記事として、子ども・被災者支援法の実現を官僚たちがサポタージユしている実態について谷岡が出ています。タイトルは、私は官僚の不作為という犯罪を許さない。(2013年5月17日)

 水野参事官が国会議員のツイートを初めてお気に入りに登録したのは、2012年11月15日の川田龍平議員の「解散のせいで「子供被災者支援法議連設立」が流れてしまいます!せめて後一週間待って欲しかった。このままでは12月に官僚が国会議論なしで基本方針を作ってしまう。皆さまどうかこの法律について、引き続き周りに広めて下さい!こちらも対策考えます」という発言だった。前述したように子ども・被災者支援法は成立以後は店ざらしにされており、議員や地方自治体、市民団体からの要請、要求が絶えなかった。こうした中、法律の成立に深く関わった議員らの動向をどう見ていたのだろうか。

 もちろん、子ども・被災者支援法の基本方針策定が遅れているのは、水野参事官だけの責任ではない。しかし法制班の幹部として子ども・被災者支援法にかかわっている以上、法の主旨に則って迅速に基本方針を策定する努力をすべきでもあろう。にもかかわらず、国会議員や市民を中傷するツイートを繰り返していたことは、正当化できるものではない。

 とはいえ、今回のツイッター騒動を水野参事官の個人問題で済ませてしまうと、子ども・被災者支援法の実施が遅れているというさらに大きな問題がそのまま残ってしまう懸念がある。

 同法成立に尽力した弁護士グループ「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)」の河崎健一郎弁護士は、ブログに次のように書いている。

・水野参事官個人を叩いても仕方ない。過去の書き込みを読んでいてむしろ気になったのは途中までは実名アカウントであり、彼自身も某国会議員と相互フォローなどとも書き、船橋市議会議員や公務員など彼の職務を知っていると思われる人とのやりとりも記録されている点。つまり、匿名で何を書いても自分を特定されないと思って書いたのではなく、半ば公然と、確信犯的に書いていたはず。

・だとすれば,少なくとも水野参事官の周辺(国会議員含む)には、水野参事官が被災者支援に関して呟いたような感覚を許容する雰囲気があったのだと考えるのが自然。

・むしろ復興庁全体の空気として、子ども被災者支援法や、原発事故避難者の問題には、関わりたくない、見ないことにしようという空気があったのではないか。

復興庁水野参事官のツイッター暴言問題について考える

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kawasakikenichiro/20130613-00025670/

 復興庁は3月に、子ども・被災者支援法の主旨に基づいて策定したという支援パッケージを示したが、その中身はおよそ同法の主旨とはかけ離れたものであると批判されている。実際、ごく一部を除いて既存の施策、あるいは全国的に実施されている施策ばかりが並んでいる。

 そもそも同法では、基本方針策定には住民の意見を聞くことを明記しているが、復興庁は支援パッケージ策定にあたってそうしたことはしていない。仮に今後、基本方針策定を詰める際にも意見聴取会ではなく、パブリックコメントで済ませようとしている。

 こうしたことを思うと、水野参事官の背後に官僚組織、あるいは政府の意思が透けて見えてくるという河崎弁護士の懸念には、全面的に同感できる。今回のツイッター騒動は、そうした政府の意図を、水野参事官が代弁しただけだったのではないかとも思えてくる。今回は、本音がたまたま人目に触れただけで、見えないところではさらに深い思惑、問題が無数に蠢いているのではないだろうか。

 政府、復興庁はおそらく水野参事官の個人的な責任に帰結して事態の収拾を図ろうとするだろう。それではトカゲのしっぽ切りと変わらない。原発事故の被害者に対する支援策をこれ以上先延ばしにさせないためにも、水野参事官のツイートにあった事柄がどのような背景を持っていたのか確認する必要があるだろう。

 そして、報道でも問題になっている3月8日のツイート、「今日は懸案が一つ解決。正確に言うと、白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意しただけなんだけど、こんな解決策もあるということ」という、内部調整を思わせる記述があることを考えると、復興庁による内部調査では不十分ではないだろうか。行政や政府が子ども・被災者支援法にどのような考えをもっているのか、なぜ一年も放置しているのか。第三者による厳密な調査でその理由を明らかにしなければ、第二、第三の水野参事官が現れ、支援策がさらに遅れていく可能性がある。

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取材を続けるため、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

http://www.news-pj.net/request/2012/kinoryuiti-shien.html

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コメント

木野さま
深い考察でした。
子ども被災者支援法の基本施策が決まらなくても、法の精神を生かすことはいくらでもできると思います。
ぜひ、被災者生活再建支援法の原発避難者への適用についてもご取材いただき考察くださいますようよろしくお願いします。

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