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2013年3月 1日 (金)

汚染水の海洋放出には、半世紀以上かかる?

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 東電は2013年2月28日、福島県のJヴィレッジで行った記者会見で、福島第一原発に大量に溜まりつつある放射性物質を含む汚染水の処理方針について説明した。その際に配布した資料によれば、仮に敷地内の汚染水を海に放出する場合、内規で定められた年間に放出できる放射能量から計算すると、すでに溜まっている汚染水をすべて放出するのに50年以上かかる可能性があることがわかった。東電は「放出すると決まったわけではない」と説明している。

 汚染水の発生源は、メルトダウンした燃料を冷やすために注水している冷却水だ。冷却水は、核燃料に触れて高濃度の放射性物質を含んだ後、原子炉建屋地下やタービン建屋地下に溜まっている。

 福島第一原発では現在、地下に溜まった汚染水を汲み上げて、放射性物質除去設備で主に放射性セシウムを取り除いた状態で貯蔵タンクに貯めると同時に、一部を再び原子炉に戻して冷却水に利用している。これが「循環注水冷却」といわれるものだ。

 しかし1号機から4号機の原子炉建屋とタービン建屋の地下には、毎日400トンの地下水が流れ込んでいると推定されており、循環注水冷却に必要な量以上の汚染水が発生し続けている。この汚染水は2013年2月26日までに24万5000トンに達した。

 増え続ける汚染水を処理するために東電は、新たに稼働を予定している放射性物質除去設備(多核種除去設備)で、汚染水に含まれる62種類の放射性物質を法令で定められた基準値以下の濃度にすることを計画。海洋への放出は「関係省庁の了解なくして行うことはない」としているが、一方では「汚染水を永遠に溜め続けることはできない」という認識も示している。また1月24の原子力規制委員会検討会で一度は、「法令で定められている濃度未満に処理し、関係者の合意を得ながら行う」とも説明した。

東電、汚染水を海へ処理後放出 東電「合意得ながら」(1月24日付共同通信)

http://www.47news.jp/feature/kyodo/news05/2013/01/post-7234.html

 問題は、この装置では放射性物質の一種であるトリチウムが除去できないことだ。東電の資料によれば、福島第一に貯留している汚染水に含まれるトリチウムは、1リットルあたり100万〜500万ベクレルと記載している。件の24万5000トンの汚染水に含まれるトリチウムは1リットルあたり500万ベクレルと考えていいと、東電は説明している。

福島第一原子力発電所でのトリチウムについて(PDF 475KB) (3月2日追加)

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130228_08-j.pdf

 ところで同じ資料によれば、福島第一原発の内規である保安規定で示されているトリチウムの年間放出量は22兆ベクレルとなっている。つまり現行の基準を順守した場合、前述した汚染水を放出できる量は最大でも年間4400トン(440万リットル)程度にしかならない。そうすると、すべてのトリチウムを海に放出するには半世紀以上、56年もの歳月がかかることになる。

 ただしこれは、現状から汚染水が増えない場合の試算だ。実際には、前述したとおり地下水などが毎日400トン程度流入しているため、放出にかかる年月はさらに伸びることになる(単純計算だが、11日の流入で1年分の放出量上限に達する)。放出期間、つまり汚染水の処理期間を短くするためには保安規定を変更することが必要だが、原子力規制委の認可を得る必要がある。規制委が基準を緩和するかどうかは未知数だ。

 また東電は、海洋放出は関係者の同意を得なければしないと説明しているものの、保安規定を守りつつ放出した場合に必要な年月について、これまで記者会見で詳しく説明したことはない。この資料を配布した2月28日午前中に東電は、福島県漁連に汚染水の状況の説明をしているが、広報担当者によれば、トリチウムの処理にかかる年数については説明しなかった。

 東電は、建屋への地下水の流入量を減らすため、井戸を掘って地下水を組み上げて流入量を減らす計画を進めている。しかし現在までの試算では、400トンのうち最大で200トンを減らせるだけだという。

 汚染水の海洋放出については、2011年12月に東電が保安院に対して海洋放出の計画を含む報告書(施設運営計画)を提出した際、全漁連から猛抗議を受けて、放出計画の部分を削除したことがある。その後も漁業関係者は汚染水の海洋放出を容認しない姿勢を示しているため、濃度を基準値以下にしたとしても、了解が得られる見通しは少ない。ましてや総量を放出するために必要な年月を考えると、漁業関係者が了解するものだろうか。

 福島第一に設置される予定の汚染水貯蔵施設は、いまのところ40万トンまで決まっているが、多核種除去設備を稼働させた場合、早ければ1年後には満水になる(1日に400トンの流入に加え、処理の際に薬液によって約1割増えるため)。東電はさらに30万トンを増設する計画を発表しているが、設置可能かどうかの地質調査などは完了していない。さらに敷地内にどのくらいのタンクを増設できるかという試算は「まだしていない」と、福島第一原発の高橋所長は会見で述べた。

 汚染水の処理は、事故収束に向けた工程の中で最大の障壁といっていい。

(3月2日 東電資料と、地下水の流入量と年間の放出量上限の関係を追加)


(2013年3月27日加筆)

汚染水のトリチウム濃度に関して、2013年3月8日の原子力規制委員会の「特定原子力施設監視・評価検討会」で新たな資料が出たので加筆します。
同日、東電は従前から出ていた検討会委員の求めに応じて、大量に貯蔵している汚染水に含まれるトリチウム濃度の推計値を公表しました。

「多核種除去設備に関するコメントへの回答」
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/data/0006_01.pdf

この資料によれば、貯蔵タンク(濃縮塩水受けタンク)に溜まっている汚染水のトリチウムは、1cm3あたり2300ベクレル、1リットルあたり230万ベクレルになります。記事中、500万ベクレルとしているのは会見中に東電担当者に確認をとったものですが、正確にはその約半分程度の濃度ということです。

この数値を元に汚染水に含まれるトリチウムを計算しなおすと、以下のようになります。

3月19日現在の汚染水の状況
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu13_j/images/130321j0101.pdf

濃縮塩水受けタンク 24万1712トン

トリチウム濃度 230万ベクレル/L

トリチウムの総量 552兆ベクレル

ここで、年間の放出量上限(保安規定による)は22兆ベクレルなので、現行の保安規定に準ずるためには、すでにある汚染水を放出するのに約25年間必要ということになります。

一方で福島第一原発の汚染水はいま、記事でも触れたように毎日400トン程度増え続けています。この全量が現在のトリチウム濃度と同程度に汚染されるとすると、1日で9200億ベクレル増えることになります。つまり、約23日で年間の放出量上限に達することになります。

このことから、福島第一原発の汚染水を減らしていくためには、現行の保安規定の上限を16倍以上に緩和する必要があることがわかります。言い方を変えると、従来の上限の16年分を、毎年、放出し続ける必要があるということです。

東電は汚染水の増加量を抑えるために、地下水バイパスの工事を進めています。けれども流入をゼロにできるわけではなく、完成したとしても汚染水が日量200〜300トンは増え続けると予想されています。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130128_02-j.pdf

汚染水の問題はなにも解決しておらず、厳しさを増す一方なのが現実です。メルトダウンした燃料の取り出しを目指して現在の事故処理方法を続ける限り、燃料の冷却後の汚染水が増え続けることになります。

これほど大量のトリチウムを除去する方法を開発するのが先か、大量のトリチウムを海洋放出するのが先か、それとも別の収束工事方法に切り替えるのか。東電が計画している汚染水タンク70万トンが満水になるまで、約2年半。時間はありません。

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