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2012年4月10日 (火)

INESレベル1のトラブル発生の報告を、HP掲載で済ませた東電

20120410_51306

 3月27日午後6時からの東京電力の記者会見で、東電の松本純一・原子力立地本部本部長代理は、福島第一原発の配管から漏えいした放射性汚染水を分析するために、設備のある福島第二原発に運んだ際、福島第二の非管理区域(放射線による無用な被ばくを避けるための管理をしていない場所=基本的に被ばくのおそれのない場所)で漏れ、周囲数カ所を汚染したことを発表した。

 松本氏の説明によれば、漏えい量はわずかで、表面汚染の濃度は最高で、1平方センチメートルあたり700ベクレルだったという。作業員の被ばくもなかったという説明があった。もっとも東電の発表資料には700ベクレルという数値の記載はなく、約200ベクレル/cm2の汚染があったことだけを記している。700ベクレルは、会見時に松本氏が口頭で発表しただけだった。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/12032705-j.html

 ところが事態は、それでは済まなかった。夜になって保安院が臨時会見を開き、福島第二を汚染したトラブルは、INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)のレベル1と暫定評価したことを発表したのだ。

 保安院の臨時会見は、東電の会見が終わって約2時間後の、3月27日午後9時15分から始まった。保安院の説明によれば、福島第二へ汚染水を運んだ際に移送用容器から漏れた量は多くなかったが、ひとつの容器には20Lの汚染水が入っており、もし容器一本分、20L全量が漏れた場合は重大な事故になっていた可能性があるといことだった。そして東電は、20Lの容器を7本、クルマに積んで運んでいた。

 このため保安院は、汚染のトレブルをINESのレベル1と暫定評価。同時に、東電に対して、放射性物質の輸送に使用する容器の技術基準の再確認(技術基準への適合性)などを報告するよう、報告徴収命令を出した。

東京電力(株)福島第二原子力発電所における非管理区域での放射性物質による汚染の確認について(経済産業省原子力安全・保安院 PDF資料)
http://www.meti.go.jp/press/2011/03/20120327011/20120327011.pdf

 翌28日午後6時からの東電の定例会見では、福島第一原発2号機の格納容器内を内視鏡で調査した結果、放射線量が極めて高いことなどが冒頭で説明された。しかし松本氏は、前日の保安院によるINESレベル1の発表や報告徴収について、自ら説明をしなかった。これは、原発事故関連の会見を実施しているという主旨からすると、どう考えても不合理だった。

 このため、会見中、なぜ冒頭で説明しなかったのかと質問すると、「ホームページには掲載している」と回答。東電としては、それで十分と判断したとのことだった。

 しかし東電はこれまで、保安院から報告徴収命令を受けた場合は会見で資料を配付し、説明をしてきている。また、INESレベル1という事象は2008年に2件が発生して以来のことであり、決して軽い事柄ではない。

 確かに漏えい量は少なく、汚染も甚大ではなかった。けれども状況を考えれば、保安院が指摘したように汚染事故が大きくなっていた可能性があったのは否定できない。東電は、発表しないことで事態を過小評価しようとしたのではないかという疑惑が生まれる。

 3月30日に東電は、汚染事故の原因となった容器が、9つの技術基準に違反していたことを発表した。
「福島第一原子力発電所から福島第二原子力発電所への分析用水の運搬に係る報告書」
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/12033008-j.html

 報告書の中で技術基準に不適合とされたのは9項目だった。これらを遵守しなかった理由について東電は、例えば容器の表面汚染密度を事前に計測して確認しなかったのは、福島第一のバックグランド(敷地全体の空間線量)が高いため計測不能だったなどと釈明した。しかし、そのほかの措置ができなかった理由について朝日新聞記者に問われた松本氏は、以下のような不明瞭な回答をした。

Q)2Fの3/4の汚染の件。×が9つ。さきほどの言及は、線量測定してない(できなかった)とのことだったが、それ以外の項目についてはどう考えている? 本来やるべきものをやってなかったのか、この状況下でやむをえないと判断していたか?
A)基本的には、今回の事故の状況とその後の環境での放射性物質の飛散状況から考えると、福島第一でサンプリングしたものを、福島第二で分析する際に技術基準に適合して輸送するのは現実的には難しかったと思う。とくに表面汚染密度は、調べた上で輸送が現実てきだが、そもそも測れる状態ではなく、サンプルがどんなものか早く調べたいということが現実だった。最終的には保安院が判断するが、やむえをえないと思っている。まもなく警戒区域見直しされ、2Fが警戒区域からはずれるということも予想していたので、その際には1Fから2Fへの輸送を見直すべきという意識は持っていた。

 この質疑は質問と回答が噛み合っていない。技術基準の中には、汚染水の移送容器は内容量の2倍以上の吸収材でカバーするという措置も規定されていた。朝日新聞記者の質問はこれを指したものだったが、松本氏は質問とは関係のない説明でその場をしのいだ。

 4月2日に私が同じことを何度か繰り返して聞くと、ようやく「吸収材は不要だと勝手に判断した」と回答。不適切な措置だったことを認めた。INESレベル1を発表しなかったことといい、この質疑での説明といい、東電の姿勢は今でも、本質的には昨年3月と大きく変わっていないように思える。

 さらにいえば、こうした回答をするという判断をしたのが誰なのかをはじめ、何かの決定があった場合の責任者の名前を、東電は明らかにしたことがない。会見では1年前から、「会社として判断している」という説明を続けている。これにより責任の所在は曖昧になり、ひいては事故処理や賠償における対応が不適切になる可能性がある。責任者が誰なのかが明らかにならない限り、同じような対応が今後も続くと思えてならない。

 この汚染事故については、4月3日に保安院が、これまでの汚染水の輸送状況などを含めて状況を調査し、原因の究明と再発防止策を4月13日までに報告するよう、追加の報告徴収命令を出した。さらに国土交通省も東電に対し、運搬状況の詳細や原因究明、再発防止策をすみやかに報告するように命じた。レベル7の事故処理過程とはいえ、今回の事態は、東電が考えているほど軽いものではなかったことが改めて確認されたといっていい。

「福島第一原子力発電所から福島第二原子力発電所への試験用水の運搬に係る技術上の基準の不適合を踏まえた対応に関する指示文書の受領について」
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1201669_1834.html

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