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2011年10月 6日 (木)

政府はICRP勧告すら守らず、恣意的に運用しているという疑念

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国が除染を支援する基準値は示されたが、破棄物処分、技術的に可能かどうかなどを考えると未解決の問題が山積。いつまでかかるかの目処も立たない。作業する人たちの被ばく管理も計画性がない。こうした状況を考えると、避難を解除した後に、元の居住地に戻るのか、移住するのかという選択肢が示されてもいいと思える。しかし政府は、上から一方的に被ばくの受忍を求め、避難者に対する支援を先延ばしにしてしまっている。

実は、政府が錦の御旗にしているICRP(国際放射線防護委員会)の勧告には、放射線から身を守るための措置を取る上で、住民を含めた関係者との協議の重要性が明記されている。ICRPの勧告は、被ばくの基準に内部被ばくを含めていないことや、被ばくによる健康への影響を軽く見積もっていることなどから批判も多いが、一方で、放射線防護措置を実施する上での手続き等については、比較的納得できる部分もあるのだ。ところが日本政府は、勧告に明記されているこうした手順を、ほとんど無視しているのである。ICRP勧告をナナメ読みしただけでも、政府の対応のデタラメさが浮かび上がってくる。

原子力災害発生直後における緊急事態への対処方法を記載したICRPの「Pub.109」では、避難等の放射線防護手順を進める上では、住民を含めた利害関係者すべてと協議をし、合意を得ることが重要だと書かれている(Pub.109 基本原則(g))。加えて、緊急事態が収束した後、一定の汚染状況の中で地域復興をしていく際の放射線防護について記した「Pub.111」では「汚染地域に居住することを人々が希望した場合にそれを認めるという決定を当局がする」と、冒頭の総括に記載されている(Pub.111 総括(d))。

これは、地域の復興を目指すため長期的な被ばくが見込まれる場合(ICRPでは「現存被ばく状況」と定義)などは、当局が一定の基準を設定し、基準を超えた汚染がある場合には強制移住を実施する一方で、汚染地域に住むという選択が「許される」というのが、ICRP勧告の考え方になっているためだ。

ICRP Pub.109「緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用(仮題)」
http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15290,76,1,html

ICRP Pub.111
「原子力事故又は放射線緊急事態後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用(仮題)
http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,html

Pub.111はタイトルの通り、原子力事故後の緊急対応が終了して以降の長期的防護措置について勧告したものだ。この中でもう一点、重要だと思うのは、やはり冒頭の総括にある「利害関係者の役割を一層強化」していることだ(Pub.111 総括(b))。

この部分は、事故初期の緊急時にはより一層強化されていて、「計画のすべての側面について、関連する利害関係者と話し合うことがきわめて重要である」と記されている(Pub.109 基本原則(g))。

利害関係者の役割の重要性という視点は、Pub.109の第2章「本勧告の範囲」(7)に例示されている過去の原子力事故(ブラジル、チェルノブイリ、英国他)からの経験により、専門的知識がない人たち(自治体関係者や住民)によって事態への対処が実施されることから得られた知見といえる。

専門性がないからこそ、Pub.111では、「被ばくした人々が自身の防護に直接関与すべき」であり、緊急時から長期的被ばくを受ける状況への移行は「協調的に、透明性に富む方法で実施され、また影響を受けるすべての関係者によって合意され、理解されるべき」であるとしている(Pub.111 1.2.範囲(7))。様々な決定をする際には、政府が上から一方的に指示するのではなく、住民を含めた関係者らが直接、決定に参加するプロセスが必須事項として挙げられているといえよう。

さらにいえば、意志決定の際の透明性確保については「重要な情報はすべて関係者に提供されること」が必要だとしている(Pub.111 総括(k))。学校での年間20mSvという基準の設定をはじめ、非常に不透明な意志決定がされてきた福島の経緯は、明らかにICRP勧告に反しているといえる。

9月30日に緊急時避難準備区域が解除された。この決定においても、ICRP勧告に従うのであれば、居住か移住かの選択は住民個人に委ねられるはずであった。また、居住するのならどういう手段で放射線防護措置を取るのか、除染するのであればそのメリットとリスクはどのようなものなのか、社会的な影響をどう評価するのか、それぞれの場合の住民支援はどうしていくのかなどは、住民を含めた利害関係者が協議して決定するものであるはずだった。

こうした住民参加の部分はスルーしている政府の対応を見ると、ICRP勧告の一部分だけを恣意的に利用してきたとしか思えない。政府がICRP勧告を都合のいいように解釈し、一部分だけを抜き出して、本来のICRP勧告とは似ても似つかない方法で施策を実施してきたのが、福島の実体ではないだろうか。

こういうご都合主義を改善していかないと、トラブルは増え、不信感は増幅され、住民間での軋轢も起こるだろう。現状ではトラブルを助長してるようにしか見えない政府の動きをなんらかの手段で修正していかないと、福島だけでなく東京も含めた汚染地域全体の状況が改善しないうえ、社会状況を悪化させていくように思えてしまう。これからもICRPを引用するのであれば、政府は勧告に則って、1日でも早く住民参加プロセスを規定し、避難基準を決め、選択肢を示すべきではないだろうか。

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