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2011年4月28日 (木)

東電の工程表が、どう見ても「ウイッシュリスト」だと思えしまうワケ

 4月17日、日曜日の午後、東京電力はかねて報道陣や関係者から要望が出ていた工程表『福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋』を公表した(東 電HPで入手可)。しかしながらこの資料、工程表と呼ぶにはあまりに大ざっぱな内容であり、多くのメディアが実現性に疑問を投げかけていた。ある海外通信 社記者が「これじゃあ、ウイッシュリストだ」と皮肉っていたのが、もっとも端的に工程表を表現した言葉かもしれない。

 東電が発表した工程表は今後の目標について、3カ月程度を目標にしたステップ1、3〜6カ月程度を目標にしたステップ2に分類し、それぞれ課題と対策を 抽出している。ステップ1およびステップ2の目標はそれぞれ、『放射線量が着実に減少傾向となっている』ことと、『放射性物質の放出が管理され、放射線量 が大幅に抑えられている』状態だ。

 工程表の基本的考え方によれば、最終的な目標として『原子炉および使用済み燃料プールの安定的冷却状態を確立し、放射性物質の放出を抑制すること』を目指すことになる。現在は、ステップ1の作業を実施しているところだ。

 ちなみに現在の状態は、工程表から引用すると、
●(1〜3号機)燃料ペレットの一部は損傷しているが、注水により冷却できている
●(1〜3号機)高温により格納容器に生じた隙間から放射性物質を含む微量の蒸気が漏洩している可能性大
●(2号機)漏水が多く、格納容器が損傷している可能性大
●プールを支える建屋の壁が損傷
など、4月16日時点で確認された13項目が並んでいる。

 続けてステップ1およびステップ2の目標として、
●1号機、3号機で安定的に冷却できている
●2号機は格納容器が密閉できるまでは耐流水の増加を抑制しるる冷却する
●使用済み燃料プールが安定的に冷却できている
●放射線レベルが高い水を敷地外に放出しないよう、十分な保管場所を確保する
など12項目を挙げ、63項目の対策を列記している。

 ここで疑問なのは、それぞれについての具体的スケジュールがまったく出ていないことだ。

 一般的に、企業が何かを開発したり作ったりするための工程表を作る場合、まず最初に最終的な目標年限を出す。開発期間が比較的長いクルマの場合でも、数年先の何月という具体的な目標を設定する。

 今度はそれに合わせて必要な工数、人数、予算などを試算していく。しかし現実には、社内および発注先のスケジュールや人員調整の関係でどうしても無理な部分が出てくるため、元に戻って最終年限の再調整をすることになる。

 そこからさらにスケジュールを詰めて……というループを繰り返しながら、具体的なスケジュールを出すのである。開発期間が数年にわたる自動車でも「工程表は1日単位で作る」(業界関係者)というほど、スケジュール管理は重要なのだ。

 ところが東電の工程表には、こうした内容が一切含まれていない。目標と課題、対策は書かれているが、そうしたことは毎日の会見に出ている私でもわかることだ。いま必要なのは、いつまでに、どういった方法で課題を解決するのか、それができない時は他になにが必要になるのかという、いわば『中身』だ。

 工程表発表後、定例の東京電力会見でスケジュール目標を聞かれた松本純一・東京電力原子力立地本部長代理は、「見せられるものができしだい公表させていただく」と回答。しかしこの答えは、3月末に工程表の存在について聞かれた武藤栄副社長が、「日々、更新している」と答えた内容と矛盾している。この点を質すと、松本氏は「今は一週間程度のスケジュールで作業を進めている。進捗状況は評価中」だとしていた。

 多少の進展が見られたのは、毎日の定例会見が災害対策統合本部、東京電力、原子力安全・保安院、文科省、原子力安全委員会が出席する合同会見になって3日目の、4月27日だった。会見の冒頭、統合本部の細野豪志衆議院議員が、懸案となっていた高濃度放射能を含む汚染水の処理施設について、5月中に機材搬入、6月に稼働を目指すと発表した。

 具体的には、フランスのアレバ社、アメリカのキュリオン社から機材や技術を導入し、東芝、日立、GEが共同で設置していく。アレバ社とキュリオン社は二十数人を日本に派遣するほか、本国にバックアップ要員を置いている。汚染水は放射性物質を分離した後、淡水化して炉心に戻し冷却に使用する。東電では、この施設により2011年末までに約20万トンの高濃度汚染水を処理できると見ている。

 とはいえ、まだ未定の部分も多い。放射性汚染水を処理した後には、より高い濃度の放射性廃棄物が残るが、この貯蔵方法、処理方法は決まっていない。処理後の水を炉心に戻す配管の設置がいつになるか、いつまでにやらなければいけないのかも未定だ。

 さらにいえば、すべての作業の前提になる原子炉建屋およびタービン建屋内の放射線量をいつまでに、どういった方法で下げるのかも見通しが立っていない。先のことではなく直近の例でも、1号機で実施している窒素注入や水棺(格納容器内で原子炉圧力容器を冠水させる)作業がいつ終わるのかが読めない。なにしろ水位がどのくらいになっているのか不明なので、スケジュールを立てようがない。

 まだある。4月中旬には武藤栄副社長が、4月中には2号機と3号機でも窒素注入作業を始める予定としていたが、28日現在で開始の目処は立ってない。そしてなにより不思議なのは、こうした作業の遅れが全体のスケジュールにどう影響するのかついて、東電も統合本部の細野補佐官も、「評価中」あるいは「今の段階ではいえない」などとしか回答しないことだ。

 もし、前述したような一般的な工程表が存在するのであれば、武藤副社長が言うように日々更新するものであり、進捗状況が説明できないということは考えにくい。このため毎日の会見に来ている記者の中には、ほんとうに工程表と呼べるものがあるのかどうか、という根本的な疑問を持っている記者も少なくない。

 ここで問題なのは、工程表の中身が明らかにならないことにより、ステップ1/2で示したスケジュールの根拠が見えなくなることだ。先が見えないことでもっとも影響を受けるのは、福島第一原発の事故で避難している周辺の人たちや、放射性物質の影響をまともに受けている農業、漁業関係者だ。

 東電には数日おきに、現地福島の議会関係者、市民のほか、隣接地域の農業関係者、漁業関係者が申し入れにやって来る。彼らの多くは事故そのものに対する怒りとともに、情報が公開されないことや、納得できるスケジュールが出てこないことに対して苛立ちを露わにし、時に気持ちが昂ぶって声を荒げる。

 避難所に退避している人たちや漁業、農業関係者が知りたいのは希望的スケジュールではなく、納得できるだけの合理的な理由だ。もちろん早く収束するのが望ましいが、期間が不透明では生活の立て直しようがない。例えば避難所にいればいいのか、それとも他の場所に移って新しい生活を始める必要があるのかなど、将来を見据えることが必要なのに、その根拠となるスケジュール(工程表)がウイッシュリストでは、動くに動けないだろう。

 内容の薄い工程表が公開されたことによる、現場作業員へのプレッシャーも気にかかる。明らかに非常識な作業環境で働く作業員たちは、言葉は不適当かもしれないが『決死隊』のような存在といえる。しかし工程表が実情を反映していないとしたら、彼ら作業員の努力を裏切ることになりはしないか。

 残念ながら、短期間で開発をこなすメーカーではなく、旧態然とした電力会社に細かい工程表を要求するのが無理なのかもしれないと感じることはある。例えば電力会社9社などが出資する日本原燃による青森県六ヶ所村の再処理工場は、1989年当時の計画では建設費用7600億円で1997年12月に完成予定だった。しかし、2011年2月21日の朝日新聞電子版によれば、これまでに計画は18回も延期され、建設費は2兆円を超えている。そして同日には、2年の延期と2000億円の事業費増が明らかになっている。
http://www.asahi.com/business/update/0221/TKY201102210397.html

 このスケジュール感のまま非常事態に対処しているとは思いたくないが、こうした事業を容認してきた体質が急に変わるとも思えないのだ。悲観的なことばかり言って何になる、という意見があることは十分に承知している。しかし現実を直視すると、楽観的な見方ができる余地などないのだと、思い知らされる。

 はっきりしているのは、戦いはまだ始まって間もないことと、長期戦が必至だということだ。それでも東電と政府には、納得できるだけの材料を揃えて、最終目標を告知する義務がある。それができないうちは、東北地方はもちろん、日本の復興もおぼつかないのではないだろうか。

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コメント

公開はしないでほしいです。

私は電気設備業に従事しております。建設現場で働いているとマスター工程表、月間工程表、週間工程表を作成しています。それと作業にあたっては通常であれば作業指示書があると思いますが・・・。原発内で働いている協力会社の方たちで作成していればいいのですが。東電の工程表は私も見ましたが、これが普通です。木野さんが要望したいのは設計図書みたいなものですかね。見積書(内訳書)があって仕様書があって図面があるみたいな。

格納容器の圧が下がっていると言う話でしたが、小出裕章氏は水棺によって格納容器の破損の悪化、水素爆発の可能性の拡大が起きるのではと懸念していました。

元々圧力容器は水を入れるために設計されたのではないし、今回の地震で損傷している可能性が高いです。
圧が下がっている→格納容器の損傷が悪化し、水が漏れている可能性があるのでは。

木野さん。東電はこれも考慮した上で水棺を決めたのか、これが起こった場合の対処を考えているのかを是非質問してほしいです。そして水棺を決めたのは誰の判断なのでしょうか。

情報が出ない中で木野さんの質問はいつも核心をついていて心強いです。真実を公表しないメディアの中で、木野さんは尊敬できる貴重なジャーナリストです。今後も引き続きご活躍を祈ってます。睡眠もきちんととってくださいね。お体、大切にしてくださいませ。

小出助教のリンクです。
http://ow.ly/4I1by

毎日お疲れ様です。

本日の会見もあまり重要な事がないですね。

最近会見の話題にもならなくなってしまいましたが、1号と3号の
爆発を比較している映像があります。
ガンダーソン氏の解説 4/26

http://www.universalsubtitles.org/ja/videos/2TnNJkefdfyZ/ja/72595/

解説の中で3号のプールについて話していますが、東電の会見では
このような話は出ていないと思うのですが。
同じ水素爆発として扱われてしまっていますよね?


米軍は情報収集しているようですが、この解説通りなら20km圏内を封鎖した意味もわかるような気がします。(海洋含む)
燃料棒の破片とか一切公開されてないと思いますが。

3号のプールの映像を公開させる事は出来ないでしょうかね?
東電が出すとも思えないけれど…。


明日は4時間会見でしょうけど頑張って下さい。
記者クラブの質問は本質とは離れているので。


反映不要です。

http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/030108.html
いつもお疲れ様です。
放射能拡散予測について先日質問されましたが、上記urlには放出源を動かすことなく、放出源情報が不明な場合でも拡散予測が可能であるとなっていますし、実績もあると書いてあります。
各自治体や民間のモニタリングは、事故当初から行われており予測は可能であったと思われます。SPEEDIの狭い範囲の公表だけやっとされましたが、是非こちらの広範囲予測が出来たであろうデータ結果の公表にも踏み込んで質問してしてください。

貴重な情報をありがとうございます。福島市在住、実家・親族10キロ圏内で今、避難してます。財産権・居住権・生存権を侵害され、避難者は、大変な痛みを伴っています。私のブログで紹介させて頂いてもよろしいでしょうか?よろしくお願いします。

>マミティさま

リンクしていただいてけっこうです。
よろしくお願いいたします。

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